支援センターで、同じ月齢のお子さんの下の歯が2本のぞいているのを見て、あわてて自分の子の口をのぞいた。
そんな経験、ありませんか。
わが家の下の子がまさにそうでした。
上の子は7か月であっさり生えたのに、下の子は10か月を過ぎても歯ぐきがつるん。
歯科衛生士として10年働いた私でも、自分の子のことになると急に不安になったのを覚えています。
こんにちは、こどもの歯育てノートのゆきです。
いまは8歳と4歳の子育て中心の生活を送っています。
この記事では、乳歯が生える時期と順番を、日本小児歯科学会が全国8,724人を調べたデータをもとに整理します。
そのうえで、「遅いかも」と思ったときにどこを見て、どのタイミングで歯医者さんに相談すればいいのかまでお話しします。
目次
赤ちゃんの歯が生えるのは生後6〜8か月ごろから
最初の1本が顔を出すのは、だいたい生後6〜8か月ごろです。
ただし、この「だいたい」の幅がけっこう広いんです。
最初の1本は下の前歯から
日本小児歯科学会が2015年から2016年に全国の子ども8,724人を調べた調査では、いちばん最初に生えるのは下の前歯(下顎乳中切歯)でした。
平均は男の子が6.8か月、女の子が7.5か月。
次に上の前歯が続き、男の子は8.9か月、女の子は9.4か月ごろです。
早い子は3か月、遅い子は1歳2か月。どちらも同じ調査の中の話
同じ調査には、下の前歯が生えた最小から最大の月齢も出ています。
男の子で3か月から14か月、女の子で3か月から13か月。
つまり生後3か月の子も1歳2か月の子も、同じ「健常な日本人小児」として同じ表に入っています。
平均の6.8か月だけを見ると7か月で生えていない子は遅れて感じますが、実際は1年近い幅がふつうにあるということです。
衛生士時代にいちばんよく聞かれたのも、この「平均より遅いんですけど」でした。
歯の生える時期は、身長や体重と同じでその子のペースがあります。
30年前より、少しだけ早く生えるようになりました
1984年に行われた前回調査(1988年報告)と比べると、下の前歯は男の子で1.2か月、女の子で1.4か月早く生えるようになっていました。
その代わり、最初の歯から最後の歯までにかかる期間は21か月から22か月台へと延びています。
生え始めは少し早く、生えそろうまでは少しゆっくり。
昔の育児書の数字と今の子が合わなくても、それは自然なことなんですね。
乳歯が生える順番と、20本そろうまでの道のり
乳歯は全部で20本、永久歯は32本です。
この20本が、だいたい決まった順番で顔を出します。
順番は「前歯 → 奥歯 → 犬歯 → いちばん奥」
意外に思われるのが、犬歯(前から3番目のとがった歯)より先に、その奥の第一乳臼歯が生えてくることです。
調査でも、男女ともに前歯8本 → 第一乳臼歯 → 乳犬歯 → 第二乳臼歯という順番でした。
わが家の上の子も、奥歯が出てきたのに手前がぽっかり空いている状態がしばらく続きました。
理屈はわかっていたのに、見た目のスカスカ感にはドキッとしたものです。
歯の種類ごとの平均月齢を表で見る
日本小児歯科学会の2019年の報告から、生える順に並べ替えたのが下の表です。
| 生える順 | 歯の種類 | 男児の平均 | 女児の平均 | 最小〜最大(男児) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 下の前歯(乳中切歯) | 6.8か月 | 7.5か月 | 3〜14か月 |
| 2 | 上の前歯(乳中切歯) | 8.9か月 | 9.4か月 | 4〜14か月 |
| 3 | 上の横の前歯(乳側切歯) | 11.1か月 | 11.0か月 | 7〜21か月 |
| 4 | 下の横の前歯(乳側切歯) | 11.8か月 | 11.9か月 | 6〜22か月 |
| 5 | 下の奥歯(第一乳臼歯) | 15.8か月 | 16.3か月 | 10〜23か月 |
| 6 | 上の奥歯(第一乳臼歯) | 16.0か月 | 15.7か月 | 11〜27か月 |
| 7 | 上の犬歯 | 17.3か月 | 18.4か月 | 11〜27か月 |
| 8 | 下の犬歯 | 17.4か月 | 18.4か月 | 9〜27か月 |
| 9 | 下のいちばん奥(第二乳臼歯) | 27.0か月 | 27.2か月 | 19〜35か月 |
| 10 | 上のいちばん奥(第二乳臼歯) | 29.6か月 | 29.7か月 | 19〜45か月 |
男女の差は、統計的に出たのが犬歯だけ(男の子が1か月ほど早い)。
残りの歯はほとんど差がありませんでした。
表の右端を見ると、後ろの歯ほど幅が広がっています。
特に上のいちばん奥の歯は19か月から45か月、1歳7か月から3歳9か月まで2年以上の開きがありました。
生えそろうのは2歳半〜3歳ごろ
20本すべてがそろうのは、2歳半から3歳ごろが目安です。
次に動きがあるのは6歳前後の生え変わりなので、しばらくお休みの期間に入ります。
歯とお口の発生については、日本歯科医師会のテーマパーク8020にイラスト付きの解説があります。
全体の流れをざっと眺めたいときに便利です。
順番が違う、片方だけ生えた。「あれ?」と思う場面
ここからは、よく相談される場面を3つ取り上げます。
結論から言うと、どれも珍しいことではありません。
上の歯から生えてきた
「下の前歯からって聞いてたのに、うちは上からでした」というご相談です。
先ほどの調査では、女の子の場合、上下の前歯の生える時期に統計的な差が出ませんでした。
どちらが先でもおかしくないくらい近いタイミング、ということです。
順番が入れ替わっても、その後の歯並びに影響が出るわけではありません。
1本だけ出て、隣がなかなか出てこない
左右そろって同時にひょっこり、というほうがむしろ少数派かもしれません。
歯ぐきの中で歯が動くタイミングは左右でぴったり同じにならないので、片方が数週間から1〜2か月遅れるのは日常的にあります。
ただ、3か月以上たっても反対側がまったく出てこないときは、健診などの機会に一度見てもらうと安心です。
奥歯のほうが犬歯より先に出てきた
これは順番が違うのではなく、これが本来の順番です。
犬歯より第一乳臼歯が先、というのは調査でもはっきり出ています。
とがった歯の場所が最後まで空いたままなので不思議に見えるだけで、心配は要りません。
見るべきなのは「順番」より「動きのなさ」
3つに共通するのは、順番の違いよりも、まったく動きがない期間の長さを見るということです。
- 順番が入れ替わった → 経過を見て大丈夫
- 左右で1〜2か月ずれた → 経過を見て大丈夫
- 数か月まったく変化がない → 一度診てもらう
- 生えてきた歯の色や形が明らかに違う → 一度診てもらう
生えるのが遅いとき、受診の目安は「1歳3か月」
この記事を読んでくださっている方が、いちばん知りたいのはここだと思います。
いつまで待っていいのか、という話です。
学会が示している目安は1歳3か月
日本小児歯科学会は、一般向けのページ産まれてから2歳頃まででこう説明しています。
1歳になってまだ生えていなくても、歯ぐきがほかの部分より膨らんでいれば歯がある証拠なので心配はいらない。
1歳3か月ごろになっても生えてこないようなら、小児歯科専門医またはかかりつけの歯科医院で相談を、と。
1歳ではなく1歳3か月。
この3か月の違いが、けっこう気持ちを軽くしてくれます。
まず、歯ぐきを見てみてください
明るいところで、下の前歯のあたりの歯ぐきを見てみてください。
歯が生えてくる場所は、ほかより白っぽく膨らんできます。
指で軽く触れると、内側に硬いものがある感じがわかることもあります。
わが家の下の子も、10か月の時点でこの膨らみがはっきりありました。
「あ、いるいる」と思ってからは、待つのがずいぶん楽になりましたね。
反対に、1歳3か月を過ぎても膨らみが見当たらないときは、レントゲンで歯ぐきの中を確認してもらう選択肢が出てきます。
1歳6か月児健診・3歳児健診も相談の場です
母子保健法にもとづいて、市町村には1歳6か月児健診と3歳児健診を行う義務があります。
どちらにも歯科健診が含まれ、自治体によってはフッ化物塗布までしてくれます(詳しくはこども家庭庁の乳幼児健診に関する取組み)。
歯科の専門家に無料で見てもらえる貴重な機会なので、気になることはメモして持っていくのがおすすめです。
私は当日その場で忘れる自信があったので、スマホのメモに書いて行っていました。
遅れの背景に考えられること
歯が遅い理由の多くは、単純に「その子のペース」です。
そのうえで、まれに次のようなことが関係している場合もあります。
- 早産や低出生体重で生まれた(修正月齢で考えると平均どおり、ということがよくあります)
- もともと歯の数が少ない先天性欠如
- 全身的な病気や症候群にともなうもの
先天性欠如が乳歯で起こることは、まれです。
永久歯のほうは日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査という報告があり、15,544人のうち親知らずを除いて10.09%に見られました。
10人に1人という数字は、私が衛生士だったころに聞いていた感覚より多いです。
どれも、親が見て判断できることではありません。
気になったら診断は歯科医師にお任せする、という線引きが結局いちばん早いです。
堺市周辺なら、ひきしょう歯科クリニックのように土日祝も診ている小児歯科もあります。
平日に時間が取れないご家庭は、休みの日に相談できる医院を知っておくと選択肢が広がります。
反対に、生まれつき歯があることも
遅いのとは逆のケースにも触れておきます。
出生時や生後1か月以内に歯が生えていることが、まれにあります。
先天歯と呼ばれるもので、日本口腔外科学会の生まれた時にすでに歯が生えていたが・・・によると、大部分は下あごの前歯の位置に出るそうです。
多くは自然に抜け落ちます。
ただ、ぐらぐらして飲み込む心配があるときや、授乳でお母さんの乳頭を傷つけてしまうときは処置が必要なので、口腔外科を受診してください。
歯が1本生えたその日から始める、家庭のケア
歯が生えたら生えたで、次の悩みがやってきます。
歯みがきはいつから、という話です。
ガーゼ拭きで、口をさわられることに慣れる
最初の1本が出たその日から歯ブラシでゴシゴシ、である必要はありません。
授乳や食事のあとに、湿らせたガーゼで歯の表面をやさしく拭う。
まずはこれで十分です。
このステップの目的は、汚れを落とすことより「口の中に人の手が入るのは怖くない」と覚えてもらうこと。
ここを飛ばして急に歯ブラシを入れると、たいてい嫌がられます。
わが家は上の子でそれをやってしまい、2歳のときに全力で拒否されました。
親御さんに「仕上げみがきは小学生まで続けてくださいね」と伝えていた本人が、自分の子には歯ブラシを口元に近づけることすらできない。
あのときの気まずさは、今でもよく覚えています。
フッ化物入りの歯みがき剤は、米粒程度から
歯ブラシに慣れてきたら、フッ化物入りの歯みがき剤を使い始めます。
日本小児歯科学会をふくむ4学会が2023年1月に出したフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法についての合同提言では、歯が生えてから2歳までの目安がこう示されています。
- 濃度は900〜1000ppmFのもの
- 量は米粒程度(1〜2mm)
- 就寝前を含めて1日2回
以前は「まだ小さいからフッ素なしで」という考え方もありましたが、今の推奨は歯が生えた時点から使う方向です。
情報の入れ替わりが早い分野なので、お手持ちの育児書の発行年は一度確かめてみてください。
歯ぐずり、よだれとの付き合い方
歯が生える前後に機嫌が悪くなる、よだれが増える、なんでも噛みたがる。
歯ぐずりと呼ばれる状態ですが、出方の個人差は大きく、気づかないうちに生えていたというお子さんも珍しくありません。
冷やした歯がためを渡す、口のまわりをこまめに拭いてよだれかぶれを防ぐ。
このあたりで乗り切れることが多いです。
ただ、発熱や下痢が続くときは歯のせいと決めつけず、小児科で診てもらうほうが安心です。
まとめ
この記事の要点を整理しておきます。
- 最初の1本は下の前歯で、平均は生後6.8〜7.5か月ごろ
- ただし3か月で生える子も1歳2か月の子もいて、1年近い幅がある
- 順番は前歯8本 → 第一乳臼歯 → 犬歯 → 第二乳臼歯。犬歯より奥歯が先で正解
- 20本そろうのは2歳半〜3歳ごろ
- 1歳3か月を過ぎても1本も生えないときは、歯科で相談を
- 歯ぐきにふくらみがあれば、歯は中にいる
- 1本生えたらガーゼ拭きから。慣れたらフッ化物入り歯みがき剤を米粒程度
数字をたくさん並べましたが、いちばんお伝えしたかったのは、平均は「真ん中」であって「合格ライン」ではないということです。
私自身、知識があっても自分の子の口の中となると平均と見比べてそわそわしました。
だから、この記事を検索して読んでくださっている時点で、もう十分ちゃんと見ていらっしゃると思います。
完璧じゃなくて大丈夫。
迷ったら、子どもの歯を見慣れている歯医者さんに聞くのが一番早いです。